小学生に学ぶ "1票の価値"

とある小学校を視察してきました.ロリコンではないのですが,小学生はホント可愛くて最高でした.最高ですね.でも残念なことに,そのクラスはなんと派閥が発生しており,争いが絶えないクラスなのだと小学生に言われ,非常に悲しい思いをしました.

その小学生によると,わずか19人のクラスでありながらも10人のAグループ,6人のBグループ,3人のCグループという派閥が出来ており,いわゆる「ガキ大将」のような人物が怖くて,でも自分にはどうすることもできず,自分は10人のAグループに所属しているのだ,と言っておりました.この話を聞いた時,僕は咄嗟に「そりゃあ君はバンザフ指数が高いね」と言って,小学生を唖然とさせてしまい,非常に申し訳なかったと思います.


さて,この話を聞いてほとんどの人は予測できたと思いますが,実はこの小学生,とんでもない決定権を持っているのです.気づきましたか?

これを明確に判定するために作られたのが,バンザフ指数と呼ばれるものです.単刀直入に言ってしまえば,「多数決のパワー」を表しています.

例題として,ABCDEの5人が《賛成 / 反対》で多数決をとる例を考えてみましょう.

いろんな分け方が考えられますよね,

「【賛成】AB --- CDE【反対】」「【賛成】BDE --- AC【反対】」

「【賛成】ABCDE --- 【反対】」「【賛成】ABDE --- C【反対】」

「【賛成】D --- ABCE【反対】」「【賛成】BCD --- AE【反対】」

この6つの例から,Aさんの権力について考えてみましょう.

「【賛成】AB --- CDE【反対】」Aさんが反対しても,結果は変わりませんね.

「【賛成】BDE --- AC【反対】」Aさんが賛成しても,結果は変わりませんね.

「【賛成】ABCDE --- 【反対】」Aさんが反対しても,結果は変わりませんね.

「【賛成】ABDE --- C【反対】」Aさんが反対しても,結果は変わりませんね.

「【賛成】D --- ABCE【反対】」Aさんが賛成しても,結果は変わりませんね.

「【賛成】BCD --- AE【反対】」Aさんが賛成しても,結果は変わりませんね.

この時,《この6パターンにおいて,Aさんのバンザフ指数は "0/6" (0%)》と言います.


次に,Dさんの権力について考えてみましょう.

「【賛成】AB --- CDE【反対】」Dさんが賛成すると,結果が【賛成】に変化!

「【賛成】BDE --- AC【反対】」Dさんが反対すると,結果が【反対】に変化!

「【賛成】ABCDE --- 【反対】」Dさんが反対しても,結果は変わりませんね.

「【賛成】ABDE --- C【反対】」Dさんが反対しても,結果は変わりませんね.

「【賛成】D --- ABCE【反対】」Dさんが反対しても,結果は変わりませんね.

「【賛成】BCD --- AE【反対】」Dさんが反対すると,結果が【反対】に変化!

この時,《この6パターンにおいて,Dさんのバンザフ指数は "3/6" (50%)》と言います.


そう!この6パターンにおいて,Aさんにはなんにも決定権がないのに,Dさんは自分が意見をちょっと変えるだけで結果を変えることができるのです!すごい!


先ほどの小学生のグループを思い出してみてください.Aグループは10人,そのうちの一人がその小学生・・・さらに6人のBグループと,3人のCグループ・・・そこで,この小学生を"D"と名付け,Aグループを9人にしてしまうのです.

この状態で,いろんな多数決を考えてみましょう.

「【賛成】ABCD --- 【反対】」19 - 0 ,Dさんが反対しても変わりません.

「【賛成】BCD --- A【反対】」10 - 9 ,Dさんが反対すると【反対】に変化!

「【賛成】ACD --- B【反対】」13 - 6 ,Dさんが反対しても変わりません.

「【賛成】ABD --- C【反対】」16 - 3 ,Dさんが反対しても変わりません.

「【賛成】ABC --- D【反対】」18 - 1 ,Dさんが賛成しても変わりません.

「【賛成】CD --- AB【反対】」4 - 15 ,Dさんが反対しても変わりません.

「【賛成】BD --- AC【反対】」7 - 12 ,Dさんが反対しても変わりません.

「【賛成】BC --- AD【反対】」9 - 10 ,Dさんが賛成すると【賛成】に変化!

「【賛成】AD --- BC【反対】」10 - 9 ,Dさんが反対すると【反対】に変化!

「【賛成】AC --- BD【反対】」12 - 7 ,Dさんが賛成しても変わりません.

「【賛成】AB --- CD【反対】」15 - 4 ,Dさんが賛成しても変わりません.

「【賛成】D --- ABC【反対】」1 - 18 ,Dさんが反対しても変わりません.

「【賛成】C --- ABD【反対】」3 - 16 ,Dさんが賛成しても変わりません.

「【賛成】B --- ACD【反対】」6 - 13 ,Dさんが賛成しても変わりません.

「【賛成】A --- BCD【反対】」9 - 10 ,Dさんが賛成すると【賛成】に変化!

「【賛成】 --- ABCD【反対】」0 - 19 ,Dさんが賛成しても変わりません.


そう,Dさん,つまり "この小学生" はどうすることもできないわけではないのです.

バンザフ指数は "4/16" (25%) あり,この小学生はクラスにおける多数決の結果を,25%の確率で操ることができるのです・・・・!偉そうにしているガキ大将に,勝てる可能性もあるのです・・・!


この話だけではありません,1票というのは,思った以上に価値があります.

たった19人のクラスなのに,1人でその多数決の25%を操ってしまうような時・・・・・

たった64人の大会なのに,1つでその順位結果の44%を操ってしまうような評価・・・・

投票者が1億人もいるのに,あなたの入れた,わずか1票の差で与党を決めることだって・・・


19人のうちの1票なんだから19分の1の価値しかない,そんなことはありません.

64人のうちの1評価なんだから64分の1の価値しかない,そんなこともありません.

1億人いるうちの1人の投票なんだから,1億分の1の価値しかない,そんなことは,ないんです.その1票が秘めているバンザフ指数はそんなに低くない.


あなたの意見は,想像以上に価値があります.バンザフ指数が,それを示してくれます.

でも,こんなこと,日本では投票に詳しい人しか知らないことなんです.投票は身近だけど,投票の理論なんて知ろうと思わない,そんな人が多いんです.Wikipediaでも,日本語版だけなくて,他の言語はある,そんなレベルの内容なんです.テレビでも一度として語られたことはありません


今,あなたが気付けば,未来は大きく変わるのかもしれません.


0コメント

  • 1000 / 1000