推理小説(2) 「もうひとりのダニエル」
僕たちは、警察からの聞き込みが終わると、釈放された。
あれだけ疑われたけれど、即逮捕、まではいかなかったらしい。万事休すとはこのことか。
「いやー、今日はさんざんでしたねー」
金子が笑い飛ばしながら会話を持ちかけてきた。正直いまは笑っていられないけど、
その声を聴くと少し気が楽になった。
「ほんとですよ。私たちの中に犯人なんていないと思いますけどね」
金田一のするどい意見がつばとともに時速300kmで飛び出した。
たしかにそう思う。犯人は、私たちに罪をなすりつけようとしているだけだ。
「そうですね、あと昨日はなんだか僕だけ帰っちゃってすみません」
ダニエルが申し訳なさそうな顔をしている。まあでもむしろ僕たちが
残業していたことの方が間違っているんだが。
「いいんですよー。あっ、僕おさきに失礼しますー」
「では僕も、お疲れ様です」
金子と金田一は家の方向が違うので、ここで別れた。あとはダニエルと自分だ。
ダニエルには聞きたいことがあったのでそのまま夜食を食べにいこう、と誘った。
「今回の犯人をだれだと思うかって?」
この質問が聞きたかったので聞いてみた。タニエルは、自分と二人でいるときには
もっと日本語がペラペラになる。少なくとも日本人よりは上手だ。
「吊るされている所がブラインドっていうのがまた悪質な犯行だ。しかも
金子や金田一、それにトオルンと僕も、部長に恨みがあるのは間違いない。
一番固い頭をしている金田一が、一番の候補かな。そして次に怪しいのは、
こういう質問を飛ばしてくるトオルンさ」
最後にちょっとグサリとやられてしまったが、まあごもっとも意見だ。
というか、ダニエルが口達者すぎるのか。
言っておくが、僕は犯人じゃないぞ。
「まあでも、自分が一番気にかけているのは、僕たち4人以外でも、
窓から入ったりできるってことかな。少なくとも肩車すれば手が届きそうだけど。」
それは確かにある。面倒ではあるが、正面から入ればカードキーが必要なので
誰が入ったかバレてしまう。しかしなんでその発想が出てくるんだ。
「まあ僕は残業したところを見てないから、なんとも言えないけれど。
そもそも部長は残業の時いたのかい?」
部長はいたよ、と返した。むしろ最後まで残っていたし、誰かが仕掛けることの
ほうがむずかしい。自害の説もあるが、それは私たちが本当に困る。
「そうか、僕はみんなが犯人じゃないことを祈るだけだね」
そうだな、とだけ返して、店を出た。やっぱ2人のときはすごい口を割ってくれるし、
2人のときのダニエルは頼りになる。
ダニエルと別れてから、帰り道の間、ずっと考えた。部長に対してそんなにも大きな恨みを持つ人がいただろうか。むしろ部長も私たちと同じように休日出勤しているのだ。
その時、脳裏に一人の人物が浮かんだ。いままでの4人とは違う。
そう、休日出勤していない人物が、ひとりだけいた。
ダニエルの口から放たれる核心を突く推理!!!!!!
日本人よりも日本語が上手なダニエル!!!!!!
そしてついに明かされる五人目の社畜!!!!!!!
次回 ≪ 熱病の岡田 ≫
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