義務教育で習わない「立候補の仕方」 その2
前回に続き,今回は選挙で立候補となるための手順について説明します.
その前提となる立候補の条件については「前回の記事」に全部あります.
まず,今が選挙の投票が始まる10日以上前であることが条件です.
参議院に立候補する場合は20日以内でないといけませんが,それ以外は10日以内です.
公職選挙法によって,あらかじめ選挙の日程は予め定められることになっていますが,
これらを公表してもニュースでは報道しないので,頑張って探しましょう.
現時点では,2021年10月10日を予定とするらしいので,最低でも 2021年9月30日までには以下の用意をして,以下の書類を提出する必要があります.
用意するもの
・300万円,または300万円と等価な国債・有価証券の証明書
・交通費 (離島でない場合,最大3万円前後)
・ボールペン (約700m以上記述可能なインク残量)
・印鑑
・(その後の選挙運転資金)
立候補の届出をする
衆議院の小選挙区に立候補する場合を想定しますが,書類はほとんど小選挙区が設置されているエリアの役所で受け取れます.オンラインダウンロードが可能なところもあります.
届出の流れを説明します.まずは (1)「宣誓書」を作成し,自分の被選挙権があり,被選挙権を停止されていないことを宣誓します.名前の署名・印鑑が必要です.立候補したのちに宣誓が虚偽であった場合は,公職選挙法第百九条の五に従って再選挙が行われます.
芸人のように広く名前がある人は,選挙にその名前を適用できます.その場合は「(1-a)通称認定申請書」を,その芸名が記載された1つ以上の証拠 (広報誌など) と共に提出します.
常用漢字でない漢字が名前に使われている場合は,「(1-b)常用漢字使用証明書」を書いて,提出する必要があります.これは,掲示で自分の名前が個人を特定できる範囲で部分的に改変されることを承諾するものです.
政党に所属する場合は,自分が(2-a)「政党所属文書」を,政党が(2-b)「政党所属証明書」を記入する必要があります.無所属の場合は(2-a)に「無所属」と記入し,(2-a)のみを準備します.
政治において技術職が必要な場合 (選挙カーの運転手など )は,買収でないことを証明するために「(2-a)報酬支給届出書」を提出する必要があります.これを届け出ずに金銭を支払うと買収扱いになり,第二百二十一条・第二百二十二条などによって懲役5年以下または禁錮5年以下に罰せられます.
(3-a) 「出納責任者選任届」は,政治資金に関して1円でも収入・支出となる場合には必須です.自分の名前を書き,自分で支出を確認すれば問題ありません.上記同様に買収の罪に問われます. (3-b)「選挙事務所設置届」は,そのような打ち合わせをする場所として選挙事務所を1つだけ設置できるというものですが,実は法律上は選挙事務所以外で「休憩」すると自宅で寝ているだけで第百三十三条の選挙違反になってしまいます.なので,選挙事務所には「自宅」を設定する必要があります.寝ないなら別に構いませんが,2週間寝ないで済む人物はいないと思います.
(4)「戸籍謄本」を準備します.戸籍謄本は,あなたの本籍(住民票 or 生まれた場所など) の場所にある,市役所・区役所で本人確認を行うと,得られます.
300万円を準備して,(5)「供託証明書」を受け取ります.各選挙区ごとに供託所が設置されているので,まずはそこに向かいます.郵送で供託することも可能なのですが,結局供託証明書を取りにいくのに足を運ぶのでほとんど意味がないです.しかも切手84円*2枚を準備するのがもっと面倒です.
郵便局で振り込めと言われ番号を貰いますが,ATMで振り込めます.どこでもいいので振り込んだら,15分後に供託所へ戻り,証明書をもらいます.
供託所の場所は県・市・区ごとに異なり,「法務省の供託所一覧」で見ることができます.
この(1)~(5)の5つと合わせて「選挙候補者届出書」を提出します.提出できる人は本人以外にも「衆議院・参議院にすでに立候補者を5人以上選出している政党」が出すこともできます.なので,選挙に一度も出たことが無い人だけが被る面倒な作業の一つです.提出先は選挙長です.このブログの最後に問題点として挙げていますが,誰かは分かりません.
「選挙候補者届出書」には名前・性別・本籍住所・現住所・生年月日・職業・Webページアドレス,立候補する選挙の区別 (小選挙区なら立候補する区の番号も記入)を記入します.
Webページアドレスは,もし選挙運動のために使用する文書などをそこで発表するのであれば,記入します.
立候補はここで終了です.この書類が選挙長に受理されれば,立候補は完了です.
問題点
1.「選挙長」がとにかく不明
公職選挙法第七十五条に基づき各選挙に選挙長を置くことになっていますが,公職選挙法の内容だけでは誰が選挙長かは分かりません.また,第七十七条では選挙会とも異なる法人であることが分かり,第八十六条の8では各選挙管理委員会とも別扱いされているため,本当に選挙長が何なのか分かりません.公職選挙法では選挙長がやることは定義されていますが,選挙長が誰なのかを公表することについて明記されているものはなく,公開されなければ書類が提出できないので立候補ができません.なので頑張って探す必要があります.
また,「選挙に選挙長を置く」という言い方も嫌らしいです.せっかく公職選挙委員会を定義しているのに,なぜそこに選挙長を置かないのかも分かりませんし,結局のところ選挙長は選挙の結果を選挙管理委員会に伝えなければならない (第八十六条) ので,本当に存在意義が分かりません.選挙を難しくしたいのでしょうか?
屁理屈言わずに説明すると,おそらく市役所・区役所で受け取ってもらえるのではないでしょうか.いずれにせよ,どこかに明記してほしいものです.
2.「300万円」が必要
「供託金」は,売名目的で選挙を利用する人が売名できないようにするために設けられた制度で,1925年の普通選挙法の制定時 (2000円) から始まりました.
日本共産党がとにかく無意味な立候補の乱立をしたことでそれ以降改正に改正を重ね,金額としては世界で一番高い 300万円になっています.ちなみに,比例代表制で出馬する場合は600万円になります.
供託金は物価の上昇とともに上がっていきましたが,物価の低化と共に下がったことは一度もありません.というのも,一度議員になってしまうと,ある程度の票が確保されるグループに所属することになり,供託金を下げることは競争相手を増やすという意味で合理的にはデメリットでしかないからです.
ちなみに,海外では供託金は違憲とされています.アイルランドでは300アイルランドポンド(日本円にして約5.5万円)が「議員の資格を有する」点において,供託金の額が十分に違憲であると判断されました.韓国も,日本円にして約180万円の供託金が違憲判決を受けて140万円程度に下がっています.
日本でも財産や収入で人を差別することを禁止している憲法44条があるため,これを問う裁判が何度も行われています.しかし,今のところすべて合憲という判断になっています.
海外での供託金の額の中央値は40万円程度で,当選に必要な票数の0.5 ~ 10%の票が得られないと返してもらえませんが,日本こそがその最高値である10%です.
たしかにこれは,世襲議員こそが議員になれると言われても無理はありません.
以上が問題点です.
掘ってみると,なかなか意味不明なことが多くてびっくりしますね.
必須書類以外にも提出しなければならない書類がいくつかありますが,
それらの説明はしません (名前が常用漢字でない人とか・・・)
次回は,選挙の立候補後の「選挙活動・活動後書類」の話をしたいと思います.
お楽しみに!
0コメント